硝酸塩,亜硝酸塩を最終電子受容体として,一酸化窒素,亜酸化窒素,分子状窒素まで還元して大気中に放出する課程を脱窒(異化的硝酸塩還元)と呼びます。脱窒は硝酸イオンを窒素に変換する過程によってエネルギーを獲得する嫌気呼吸の一種です。脱窒を行う脱窒菌は自然界に広く分布しており,地球規模の窒素循環において窒素酸化物を分子状窒素に戻すという重要な役割を演じています。 脱窒反応には,金属を触媒反応に利用する酵素が働いており,その中でも我々はマルチ銅型亜硝酸還元酵素(NIR)と,マルチ鉄型 一酸化窒素還元酵素(NOR)を対象に研究を展開しています。
マルチ鉄型一酸化窒素還元酵素(NOR)は,一酸化窒素を亜酸化窒素(一酸化二窒素)に変換する酵素で,酸素呼吸鎖の末端酸化酵素であるシトクロム酸化酵素の先祖酵素です。マルチ鉄型の膜酵素であるNORが,プロトンポンプ能を獲得しマルチ鉄-銅型の末端酸化酵素に分子進化した過程を再現することを目指して,異種および同種発現酵素の変異体を作成しています。本研究は名古屋市立大学のグループと共同で進めています。
名古屋市立大学大学院システム科学研究科櫻井研究室亜硝酸還元酵素(NIR)は 亜硝酸イオンを1電子還元し一酸化窒素を生成する反応を触媒します。マルチ銅型NIRは,マルチ銅オキシダーゼと共通の先祖タンパク質であるブルー銅タンパク質から進化した酵素で,その銅活性中心は驚くほどよく似ています。我々はマルチ銅オキシダーゼおよびNIRの変異導入による機能改変を通じて,マルチ銅酵素の分子進化過程を解明する研究を行っています。本研究は大阪大学のグループと共同で進めています。
大阪大学大学院理学研究科鈴木研究室